グローバルヒストリー
生井海東
Kaito Namai
専攻分野
政治理論(構造的不正義、歴史的不正義)
目指す研究者像
政治理論という学問領域に立脚しながらも、既存の枠組みにとらわれず、他分野との横断的な関わりを通じて思考を広げていくことができる研究者を目指している。普段の研究でも、不正義や抑圧をめぐる現実の政治的課題から出発し、理論と実践のあいだに生じる乖離をいかに縮められるかを問い続けている。周縁化されてきた声に敏感であることを重んじ、特権性と非特権性を併せもつ自己の研究者としての立場と向き合い、その在り方を模索している。
東アジアにおける歴史問題と和解の課題については、自身が日本と中国の両方のバックグラウンドを持つことも影響し、単なる理論的対象ではなく、政治的かつ個人的な問いとして見つめ続けている。将来的には、国際的に活動できる政治理論家として、規範的視点から東アジアの歴史問題とその和解に関する議論を問い直したい。
自分の研究テーマ紹介
過去の不正義に対し現代の行為主体がいかなる責任を負うべきかは、近年の政治理論における重要課題である。歴史的不正義の問題は、その構造的複雑性に加え、記憶・感情・言説の対立や現実政治の力学が重なり、今日においても深刻な政治的亀裂を生じている。従来の議論は、公正な所有の継承を重視する「歴史的権限理論」と、集合的帰属に基づく「メンバーシップ理論」に大別されるが、いずれにも理論的限界がある。これに対し、近年注目される「構造的不正義理論」は、現代の非当事者であっても、不正な社会構造の再生産に参与する限り責任を負うと主張する。しかし本研究は、この理論が「社会的分断」や「紛争」の文脈において、集合的行為を可能にする「民主的フォーラム」の欠如という重大な課題に直面している点を指摘する。「民主的フォーラム」の不在は、周縁化された声の不可視化を招き、構造改革責任の遂行を阻む。本研究は、民主的制度の存在を理論的前提とする従来の構造的不正義論を批判的に再検討し、「構造的責任を遂行するための前提条件を整える責任」としての「予備的責任(Preliminary Responsibility)」を提示する。さらに、予備的責任を民主的フォーラムの構築および政治的和解(Political Reconciliation)の実現に向けた理論的枠組みとして位置づける。