
東京大学大学院人文社会系研究科 次世代人文学開発センター 特任助教
代表業績
Lee, C. (2022). “Between Visible and Invisible Deaths of the Korean War: Re-envisioning Operation Glory (1954) at the United Nations Memorial Cemetery in Korea.” International Journal of Military History and Historiography, 44(3), 458-483. https://doi.org/10.1163/24683302-bja10037. 【英語】
- 2022年国際軍事史学会・新進研究者賞 (2022 IJMH Early Career Paper Prize) 受賞論文、https://brill.com/view/journals/ijmh/ijmh-overview.xml?contents=Award
李貞善(2023)、「記憶の場としての国連記念公園:戦争墓地の文化遺産化」、 東京大学大学院人文社会系研究科博士学位論文。 【日本語】
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/postgraduate/database/2022/2022thesis-74.html.
李貞善(2024)、「朝鮮戦争における国連軍戦死者追悼空間の平和的意義:1964年国連記念墓地の追悼館造成」『統一と平和』16(3)、ソウル大学統一平和研究院、269-305頁。 【韓国語】
専攻分野
- 文化遺産学 (世界遺産学)
- 戦争・社会学 (軍史学・アーカイブ学)
目指す研究者像
これまでの活動においては、2024年米ハーバード大学にて開催された国際学会研究賞を含め、国際軍史学会と国際出版社Brill の「2022 年新進研究者賞」を受賞するなど、所定の成果を収めることができました。また、私の博士論文に基づいた研究は、韓国放送公社(KBS)ドキュメンタリーの学術監修の他、大韓民国歴史博物館の特別展示会の展示物として公式活用されました。
今後は東京大学、ソウル大学、世界遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)韓国委員会、建国大学大学院世界遺産学科、渥美国際交流財団を跨ぐ経歴を活かして研究の地平を広げていきたいと考えています。これを踏まえ、将来は早稲田大学現代政治経済研究所の特別研究員として、国際和解学および国際政治学の観点から戦争にちなんだ記憶と文化遺産に関する研究成果を国内外にさらに発信し、文化遺産の持続可能な平和的価値の共有に貢献することを願っています。
現在進行中の紛争や戦争、難民危機といった地球的課題に取り組むことで、従来のアジア研究、文化研究、歴史研究、遺産研究の範囲を拡大し、国際和解学の観点から人間の尊厳に寄与することを目指しています。ゆくゆくは、日本と韓国、国際社会を結ぶ架け橋的研究者として、文化遺産と世界遺産、記憶学における和解学プロジェクトの「智の還元」と、平和構築の一助となりたいです。
研究テーマ紹介
文化遺産や世界遺産を対象としたフィールドワークとアーカイブ研究に携わっています。とりわけ戦争遺跡をめぐる様々なアクターの記憶とポリティクス、コメモレーション、また紛争に巻き込まれた人々の尊厳といった諸問題についても関心を抱いています。日本では、外国人としては最初の世界遺産検定のマイスター(Meister)と認定講師として、世界遺産とそれにまつわる諸主体の記憶と尊厳に光を当てています。 同時に、ICOMOS-KOREAのメンバー、また建国大学大学院・世界遺産学科の交換教授(Exchange Professor)を兼業し、世界遺産の概論や、遺産の解釈における相反する言説の教育を担当しています。
最近は研究の裾野をさらに広げ、国際和解学、歴史学・軍事史学・アーカイブズ学的な観点から朝鮮戦争及び冷戦が遺した有・無形の産物について考察を進めています。博士論文で取り上げた世界唯一の国際連合(国連)の墓地である韓国・釜山の国連記念公園を切り口として、米・国連本部のアーカイブや国連軍参戦国の研究機関、韓国放送公社 (KBS)などの多岐にわたる機関と連携し、研究成果を社会に還元してきています。
国連墓地の設立70周年を迎えた2021年には、KBS側の依頼を受けて、当放送局が制作した特別ドキュメンタリー「記憶の国、国連墓地」の公式アドバイザーとして学術監修を行いました。それ以来、日本と韓国でドキュメンタリー上映会を自ら企画・開催したり、一般市民を対象に教育講座を設けたりして、メディアと文化を切り口に、和解と記憶を次世代に継承する実証的研究を進めています。
このように、文化遺産をとりまくさまざまな「記憶」に光を当てて、論文執筆と国際学会での発表、ドキュメンタリー制作参加、政策提言、市民への啓蒙・教育に尽力することで、平和構築と和解の洞察を提供する「知の還元」に多角的に貢献しています。
- 日本の世界遺産検定マイスターとしてのインタビュー:
https://www.sekaken.jp/about/recognition/interview106/
- Kudos Research:
https://www.growkudos.com/publications/10.1163%25252F24683302-bja10037/reader
ワーキングペーパーの仮題目
今後和解学プロジェクトに参加できましたら、これまで日本と韓国、欧米の文化遺産学・世界遺産学・軍事史学・アジア学の分野で身につけた専門知識と実務能力を書籍執筆に活かしたいと思っています。
最も興味を持っているのは、和解学の創成の「和解文化・記憶班」です。「和解文化・記憶班」を含め、他の班と連携し、世界遺産と紛争遺産の解釈における相反する言説や、朝鮮戦争が遺した朝鮮半島および国連軍参戦国の遺産、コメモレーション、記憶のポリティクスを取り上げたいと考えています。可能であればこれらのテーマを社会学、記憶学、歴史学、国際政治学の文脈に落とし込んで、学際的観点から「国際和解学」を俯瞰する計画です。
これまで分担執筆した書籍 (book chapter) には、Management of World Heritage Sites, Cultural Landscapes and Sustainability (Cambridge Scholars Publishing, 2020)や、 Cultural Sustainable Tourism (Springer Nature, 2022)などがあります。共同訳書には、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)韓国委員会の同僚たちと共同で翻訳した、「Our Common Dignity- Rights-Based Approaches Working Group, History and Milestone (私たちの共通の尊厳―権利ベースアプローチ作業部会歴史と道しるべ)」(2024-2025)があります。
研究画像

2021年の学術論文が2024年大韓民国歴史博物館・国連軍特別展示会の展示物に活用