メンバー

Members

和解学を共に研究するメンバーたちです。

研究分担者

平井 新

Hirai Arata

Hirai Arata

東海大学 特任講師

最新の研究業績

「2024年台湾総統・立法院選挙結果の分析― なぜ第三勢力・民衆党の支持が拡大し、失速したのか?」. In : Human Security, No.15. pp.01-23, 2025年3月, 東海大学平和戦略国際研究所 

“Japanese Police Activities in a State of Emergency: Focusing on the Great East Japan Earthquake and the Covid-19 Pandemic”. In: Routledge International Handbook of Policing Crises and Emergencies. pp. 43-58, 2024年9月, Routledge 

 “The Fourth Taiwan Strait Crisis? Disputes on the “One China” Issue Between Japan and China”. In: SUNGKYUN CHINA INSIGHT, 2022年9月 

 “Professionalism versus democracy? Historical and institutional analysis of police oversight mechanisms in three Asian jurisdictions”, In: Crime, Law and Social Change (76) pp.1-25, 2021年8月, Springer 

Policing the Police in Asia: Police Oversight in Japan, Hong Kong, and Taiwan (Springer Briefs in Criminology), 2021年9月, Springer

自己紹介

私は、東海大学政治経済学部で特任講師(テニュア・トラック)を務めています。専門は比較政治学、移行期正義論、そして現代台湾政治を中心とした東アジアの現代史です。

私の研究の原点は、台湾、中国(上海、北京)への留学にあります。学部・大学院での留学経験を機に、東アジアの多様な社会とトランスナショナルな歴史への関心を深め、大学院では現代台湾の「移行期正義」の展開をテーマに博士論文を執筆しました。北京大学国際関係学院の博士課程でも学び、日本、中国・台湾という異なる視点から地域を多角的に捉える訓練を積んできました。

研究関心は、民主化後の社会が過去の国家暴力といかに向き合い、真相究明や責任の明確化、被害者への賠償・名誉回復などを通じて社会の和解を追求する法政治メカニズム=「移行期正義」です。台湾では、「多重族群」と呼ばれる複数のエスニックグループが経験した異なる種類の国家暴力について、「移行期正義」の対象として同様に向き合うことを通じて、他者と共有可能な共同体共通の歴史を構築していく和解の過程として捉えて研究を進めています。

近年、メディアでは「台湾有事」が俄かに焦点化されるという形で台湾政治が注目を浴びていますが、台湾社会における民主化とそれにともなうアイデンティティの形成・変動に関心の主軸を置きつつ、日本を含めた周辺地域とのトランスナショナルな関係/史をふまえて、より広い文脈では、危機の時代における東アジア地域社会におけるリベラリズムやデモクラシーの制度、思想、運動の展開に関心をもって研究に取り組んでいます。最近では、日本の八重山諸島などを含めた「国境離島」の比較社会研究にも取り組んでいます。

本プロジェクト(国際和解学)への貢献

私の研究は、ある社会が過去の深刻な人権侵害をいかに乗り越え、より公正な社会を再構築するかという、和解の核心的な問いに取り組むものです。特に、台湾における移行期正義の実践は、東アジアにおける和解の具体的なモデルケースとして、本プロジェクトに豊富な事例と分析の視座を提供できると考えています。これまで参加してきた「普遍的価値と集合的記憶を踏まえた国際和解学の探究」や「東アジアにおける歴史和解のための総合的研究」といった研究プロジェクトでの経験を活かし、地域固有の歴史的文脈(集合的記憶)と、民主主義や人権といった普遍的価値とを架橋する理論的貢献を目指します。日本、中国、台湾での研究経験を通して培った複眼的な視点から、東アジア発の国際和解学の創成に寄与したいと考えています。

若手研究者の皆さんへ

私自身の研究を振り返ると、国や地域、学問領域の「境界」を越える経験が、常に新しい視点を与えてくれました。皆さんも、ご自身の領域に留まらず、積極的に境界を越えてみることで、予想もしなかった発見があるかもしれません。また、フィールドワークの重要性を強調したいと思います。私自身、統計的な定量分析や文献資料の読み込みだけでなく、実際にその土地に足を運び、現地の人々の声に耳を傾けることでしか得られない知見も大事にしていきたいと考え、研究に取り組んできました。

加えて、研究の面白さの一つは、多様な背景を持つ人々との協働にあるのではないでしょうか。私自身の業績も、国内外の素晴らしい共同研究者との対話なしにはあり得ませんでした。異なる専門性を持つ仲間との議論は、一人で悩む時間を、刺激的で創造的な探求の時間に変えてくれるはずです。国際和解学という新しい学問領域は、世界中の多様な地域の歴史と経験が交差することで、より豊かに実るものだと信じています。

本プロジェクトに集う個々人がそれぞれのフィールドで真摯に取り組む研究に加えて、研究分担者の一人である私の、台湾事例を中心に東アジア地域の和解について探究してきた知見を対話させることで、これまでにない新しい和解の理論やビジョンが生まれてきますように、このプロジェクトが、そうした世代や学問領域、地域を越えた協働の場として、共に国際和解学の新たな地平を拓いていけることを心から楽しみにしております。

研究画像

2024年1月台湾総統選挙、台湾民衆党の選挙集会にて。

2025年6月、チェコ・オロモウツの欧州台湾学会での報告時の写真