ニューズレター・エッセイ

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和解学に関連するニューズレター・エッセイをご紹介します。

2025ソウル 国際和解学会

歴史的和解と市民の関与――日本における長崎人権平和資料館をめぐって

バナジー・モウミタ

国際大学国際関係学研究科 非常勤講師

私の発表では、日本の市民社会が歴史的和解の課題にどのように積極的に取り組んでいるかについて述べ、特に長崎人権平和資料館の事例に焦点を当てました。この資料館の設立を主導した人物が、平和運動家であり人権活動家でもあった岡正治(1918–1994)です。彼は「在日朝鮮人の人権を守る長崎の会」を設立し、原爆と朝鮮人に関する調査結果を『原爆と朝鮮人』という4巻本にまとめて出版しました。

長崎に資料館を開設する目的は、第二次世界大戦中、特に東アジアにおける日本の侵略について人々が学ぶことのできる場をつくることでした。資料館は、岡正治の死後の1995年に、銀行からの4,000万円の融資を受けて設立されました。設立当初から多くの困難に直面してきましたが、30年が経った今も存続しています。

大きな困難の一つは、岡正治が生前に性暴力を行っていた事実が明らかになったことでした。これを受けて、資料館は彼の名前を冠していた旧名称「岡まさはる記念長崎平和資料館」から「長崎人権平和資料館」へと館名を変更し、展示の中にあった「岡まさはる記念コーナー」も撤去しました。

私はまた、同資料館の展示スタイルについても注目しました。展示は3階にわたり構成されており、訪問者に深い省察を促すよう工夫されています。展示の企画・構成は専門のキュレーターではなく、地域住民や学校・大学の教育関係者によって行われています。

展示内容には、「原爆による朝鮮人・中国人被害者」、「朝鮮・中国からの強制労働」、そして「性奴隷として働かされた女性たち」などのテーマが含まれています。

私は、こうした草の根からの和解への取り組みが非常に重要であると主張しました。というのも、資金や人手の不足といった困難があるにもかかわらず、この資料館は継続的に活動してきたからです。市民社会によるこうした取り組みを国際的な事例と比較すると、自国の加害の歴史を展示したり議論したりすることの困難さがよく分かります。

そのような困難を抱えながらも、この資料館は30年間にわたって活動を続け、「日本の歴史認識問題」や和解の課題に取り組んできました。この資料館の存在自体が、市民社会が複雑な歴史問題に向き合う勇気を示していると言えます。したがって、この資料館は、市民社会が平和、癒し、そして和解に貢献することができるという成功例だと考えています。

コメントと質問

以下は、私の発表後に寄せられたコメントや質問の一部です。

  • このような施設の普及において、ソーシャルメディアはどのような役割を果たしているのか?
  • 若者はこの資料館の活動に関わっているのか?
  • なぜ広島の資料館ではなく、長崎のこの資料館を取り上げたのか?
  • パネル発表後の非公式なディスカッションでは、この資料館のキュレーション手法は、他の日本の戦争資料館とどう違うのか、といった質問も受けました。

これらのコメントや質問はどれも非常に有意義で、自分の考えをさらに深めるきっかけとなりました。

他のパネル発表に関するコメント

私はIARS2025年会には16日の午後に到着したため、多くの魅力的なパネル発表を見逃してしまいましたが、以下のパネルでの発表と議論を興味深く拝聴しました。

  • 「東アジアにおける和解学の展開」
  • 「過去との対峙と現在の枠組み」
  • 「橋を架ける:分断された世界における和解と持続的平和のための教育の役割を分析する」

これらの発表の中でも、古賀ユキコ教授の発表と、カリーナ・コロステリナ教授による基調講演からは、和解に関する重要な研究や主要概念について多くの示唆を得ることができました。今後、お二人の研究をぜひ読んでみたいと思っています。