メンバー

Members

和解学を共に研究するメンバーたちです。

哲学・心理学

曹思敏

Simin Cao

Simin Cao

大阪大学人間科学科研究科 博士後期課程

代表業績

研究発表:曹思敏、「日中BL作品から見る国家規範性とその超克」、カルチュラル・タイフーン2024、神戸・KIITO、2024年9月

研究発表:曹思敏、「二種類の悲しみ——日中BL作品における悲恋の比較」、カルチュラル・タイフーン2025、台湾・高雄大学、2025年11月

専攻分野

比較文明学、表象文化論

目指す研究者像

日中・アジアの架け橋となる研究者

大衆文化研究は中国ではまだ新しい学問であり、多方面に発展の余地を残す。日本の大衆文化研究の最新の成果を中国に紹介し、中国における学問領域の本格的な構築を促進に資することで、日中の架け橋となる研究者を目指したい。さらに日中の比較研究を手掛かりに、より広範なアジア文化研究を展開し、アジア間の学術・文化交流を促進することにも貢献したい。

研究テーマ紹介

日本と中国のネット小説や漫画の物語構造やキャラクター表象に見られる両国の文化的特徴の違い、そしてその背後にある社会・歴史的背景に着目しつつ、大衆文化表象が社会的価値観の形成や再編にどのように関与するのかを論じるジジェクの文化理論を学び、研究の理論的基盤を築いている。
理論的枠組みとして、スラヴォイ・ジジェクやフレドリック・ジェイムソンらの文化理論に見られる「欲望」や「享楽」の理論を援用し、ミクロなテクスト分析とマクロな社会理論の議論を接続する。ジジェクが指摘する「シニカルな享楽」の構造や、ジェイムソンの「ユートピア衝動」の理論を用いることで、文化表象が社会観念の反復・逸脱・再構成にどのように寄与するかを分析する。
こうした理論的視角は、日中における文化表象の比較、とりわけネット小説や漫画といった大衆文化の領域を分析する上で有効である。ジジェクは社会で共有される冗談や広告の形式に見られる差異に注目し、それらが社会規範と現実の間に生じる不整合――いわゆる「裂け目」――において個人を捉える無力感を補償するための「幻想的補填(fantasmatic supplement)」として機能していると論じる。一方、ジェイムソンは、大衆文化のテクストが社会的矛盾を象徴的に処理する過程において、しばしば「ユートピア衝動(utopian impulse)」を提示し、現実の矛盾や限界に対して「想像的解決
(imaginative resolution)」によって対処する機能を持つと指摘する。この視点を組み合わせることで、裂け目の位置が社会・文化的条件によって異なることに起因する地域固有の文化表象の特徴と、そこに潜む潜在的な理想的解決の志向の両方を把握できる。日中の社会状況が異なる文化観念の差異を生み、その差異がネット小説や漫画におけるキャラクター表象や物語構造の違いとして具体化するのである。こうした分析は、国民意識の相違を理解することにつながり、さらに各々がいずれも歴史的な社会変動への反応(reaction)であることの理解を通して、共通の基盤的課題に立ち向かう場にあることの理解につながると言えるだろう。
本研究は以上の理論的枠組みをもとに、ネット小説・漫画というミクロな文化テクストの分析と、そこに反映される社会文化的価値観のマクロな考察とを結びつける。ひいては、文化差異の理解を通じて両国の相互理解を促進し、価値観のずれに起因する誤解を解消するための知的基盤を提供することで、和解学が目指す「対話可能性の拡張」に寄与することを目指す。

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