安全保障・人権班

人権と安全保障班は、近年の一次資料公開によって1970〜80年代のアメリカ外交の実態がより精緻に検証可能となった状況を踏まえ、アメリカの「人権外交」が東アジアに及ぼした影響を歴史的に再検討することを目的としている。本班は、「アメリカの人権外交が東アジア諸国の民主化過程を後押しした」とするハンティントンの主張を出発点とし、その実証的検証を行うとともに、人権外交において米国や先進諸国が対象から外されるという「死角」の存在や、人権外交が東アジアにおける移行期正義の形成に及ぼした影響にも注目し、これらの現象を複眼的に捉えることを目指している。

こうした研究関心に基づき、国際和解学叢書において本班は、東アジアにおけるアメリカの人権外交を包括的に再検討する英語編著の刊行を進めている。本書は、外交史と比較政治の知見を統合し、アメリカによる圧力や関与が地域の民主化に果たした役割を検証するとともに、人権言説が日本と周辺諸国との歴史認識問題に与えた影響や、地域における反米感情の形成との関連を明らかにする。さらに、沖縄がアメリカの人権外交における構造的な盲点として位置づけられてきたことにも着目し、人権外交がもたらした予期せぬ帰結についても検討する。

本書は、アメリカの権力、人権規範、そして東アジアの地域変容との相互関係を歴史的に捉え直すことで、国家間の対立や分断を和解の視点から理解するための新たな理論的枠組みを提示することを目指している。