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2026 イギリス・ドイツ

サマースクール2026に参加して:ケンブリッジ大学での報告と研究交流

藤田 吾郎

一橋大学大学院法学研究科 講師

はじめに

2026年9月28日から29日にかけて、国際和解学プロジェクトの2026年サマースクールとして、ケンブリッジ大学アジア中東学部で開催された「Political Imagination Beyond National Borders: Reconciliation in Postwar East Asia Conference」に参加した。筆者にとって、国際和解学プロジェクトのサマースクールに参加するのは初めての経験であったが、非常に有意義であり、滞在を通じて非常に充実した時間を過ごすことができた。以下、本稿では、ケンブリッジ大学での報告と質疑応答、そして意見交換についての概略を記したい。

報告と質疑応答

 筆者は9月28日に、「Returning to Asia: Shigemitsu Mamoru, the U.S.-Japan Security Treaty, and Asian Regionalism in the 1950s」(アジアに回帰する:重光葵、日米安全保障条約、1950年代のアジア地域主義)と題する報告を行った。本報告は、戦後日本の安全保障政策の展開と、戦後日本による近隣諸国との関係回復の試みが、いかなる論理で連動していたのかを探求するという問題意識に基づき、戦中と戦後に複数回にわたって外務大臣を務めた重光葵(しげみつ・まもる)の対外政策構想の再検討を試みた。東条英機、小磯国昭、東久邇稔彦、鳩山一郎首相の下で外相を務め、戦時中ならびに戦後初期の日本外交において重要な役割を担った重光の対外政策構想については、すでに重厚な先行研究が積み重ねられている。先行研究では、彼がアジア・太平洋戦争を横断して、アジア重視の姿勢を一貫して取っていたことが強調されている。また、先行研究は、戦後の重光の外交・安全保障構想を分析するなかで、彼が日本の積極的な再軍備や在日米軍の日本本土からの撤退といった構想を抱いていたことを明らかにしている。しかしながら、戦後における重光の安全保障構想と対アジア外交構想とは、これまで主として個別に分析される傾向にあり、両構想を統合的に分析して戦後の重光外交の包括的な像を描く試みは、いまだ道半ばであるといえる。したがって、本報告は、重光外交における戦前・戦後の連続性という視点を意識しつつ、彼の安全保障構想と対アジア外交構想の連動を探求することを試みた。

〈写真:ケンブリッジ大学アジア中東学部、2026年9月28日、池上慶徳撮影、報告中の筆者の写真〉

そのうえで、報告後の質疑応答では、フロアの参加者から、多くの質問が寄せられた。たとえば、重光の外交・安全保障構想に関しては、重光による日ソ国交回復の模索と、彼の対米・対アジア外交との連動に関する質問や、重光の発言や記述における本心とレトリックの区別に関する質問などが寄せられた。また、戦前・戦後の連続性に関しては、戦前と戦後を横断して政治問題に関与した日本の諸アクターの構想との比較のなかでの重光の外交・安全保障構想の特質に関する質問などが寄せられた。これらの質問と筆者による応答を通じて、戦後日本による近隣諸国との関係回復、日米関係、そして日本人の外交・安全保障構想における戦中と戦後の連続性などの重要な論点について、活発な議論が展開された。

意見交換

 報告と質疑応答にくわえて、筆者は本サマースクールへの参加を通じて、他の参加者と活発な意見交換を行い、研究視野を拡大することができた。とりわけ、ホストを務めたいただいたケンブリッジ大学バラク・クシュナー教授、ワークショップに参加したイギリスの日本史研究者、大学院生との意見交換を通じて、自身の報告内容に関する追加での詳細な議論を行えたこと、さらにケンブリッジ大学をはじめとするイギリスの研究機関における日本現代史研究の現状について多数の有益な情報を獲得できたことは、自身の研究の深化ならびに研究ネットワークの拡大にむけて、大変意義深かった。今回の機会を通じて得られたネットワークを基盤にして、国際的な研究交流の進展において役割を果たせるよう、一層の努力を重ねたい。

〈写真:ケンブリッジ大学フィッツウィリアム・カレッジ、2026年9月30日、藤田吾郎撮影、滞在先のカレッジの写真〉

おわりに

 今回のサマースクール参加は、研究内容の進展と研究交流の拡大の両面で、筆者にとって非常に有意義なものであった。本サマースクールにお誘いいただいた浅野豊美教授、会議の開催にあたりお骨折りいただいたバラク・クシュナー教授ならびにケンブリッジ大学の皆さん、国際和解学プロジェクトでご一緒している皆さん、そして渡航関係の手続きに関して手厚い支援をいただいた国際和解学プロジェクトの事務局の皆さんに、厚く御礼申し上げる次第である。

付記

本研究プロジェクトは、JSPS科研費(23K20033)、早稲田大学特定課題研究助成費(2025E-001)、村田学術振興・教育財団研究助成(2025年度)の助成を受けた研究の一部である。

主要参考文献

坂元一哉『日米同盟の絆――安保条約と相互性の模索』有斐閣、2000年

佐道明広『戦後日本の防衛と政治』吉川弘文館、2003年

武田知己『重光葵と戦後政治』吉川弘文館、2002年

波多野澄雄『太平洋戦争とアジア外交』東京大学出版会、1996年

潘亮『日本の国連外交――戦前から現代まで』名古屋大学出版会、2024年

宮城大蔵『バンドン会議と日本のアジア復帰――アメリカとアジアの狭間で』草思社、2001年

Iriye, Akira. Power and Culture: The Japanese-American War 1941-1945, Cambridge, MA: Harvard University           
  Press, 1981

Kushner, Barak and Sherzod Muminov, eds. The Dismantling of Japan’s Empire in East Asia:        
  Deimperialization, Postwar Legitimation and Imperial Afterlife, Routledge, 2017

Swenson-Wright, John. Unequal Allies?: United States Security and Alliance Policy Toward Japan, 1945-1960,
  Stanford, CA: Stanford University Press

Yellen, Jeremy A. The Greater East Asia Co-Prosperity Sphere: When Total Empire Met Total War, Ithaca:
  Cornell University Press, 2019